FF14

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  • 呼ぶ

    「アルバート、昼食いに行こう」 よくよく思い出せば、同じ職場の同僚としてなんとなく仲良くなった頃から、俺の名前を呼ぶ姿はどこかそれだけで嬉しそうだった気がする。

  • 振り回す

    「どうしても見せたいものがあって」 そう言って、奴は俺を連れて出かけた。こういう形で奴が俺を外に連れ出すことは珍しくない。

  • 嘯く

    詩が聴こえた。ふと見上げると、わざわざ登ったのか、四角い建物の屋根に男が腰掛けている。 「珍しいですね」 「ん? ……ウリエンジェか。お前こそ」

  • 絆される

    長らく、その気持ちがなんなのか理解していなかった。少し悔しいような、それなのに嬉しいような不思議な感覚。ともすれば泣きたくなるような。

  • 確かめる

    「ときどき、疑っちまう。お前のその感情が、言葉が、俺に対する憐れみなんじゃないかって」 風呂上がりの湿った髪をタオルで拭きながら、ソファに座っている俺の隣に腰掛ける男はそう呟いた。

  • 誤魔化す

    その日は少し、後味の悪い仕事をした。と言ってもそんなこと自体は珍しくなく、そもそも双剣士ギルドは都市の暗部を背負っているのだから、仕事をするうえである程度のことは覚悟しなきゃいけない。掟を破るものがみな、必ずしも根っからの悪というわけではないのだから。

  • 舐める

    得てして昔馴染みとは、まったく関係ないところでばったり会ってしまうものだ。特にあまり会いたくない相手に限って。たまたまその日は仕事の激務に疲れて、家の近くにある川を跨ぐ大きな橋の欄干に、肘を預けてぼうっと突っ立っていた。

  • 絡める

    こうして改めて指先を絡めさせると、それだけで胸の高鳴りを覚える。キスをしたりそれ以上のこともやってきたが、手を繋ぐという言葉にすればあまりに些細なことが、あるいはひどく気恥ずかしいものに思えるのだと知った。そもそも誰かとこうして手を繋いだりなど、これまで生きてきてしたことがない。

  • 疼く

    ※漆黒直前のあれ その連絡を聞いたとき、胸がずきりと痛んだ。サンクレッドが何の前触れもなく唐突に意識を失って倒れたと。いったい何があったのか、外傷がないなら何か特殊な術でも受けたのか——様々な考えが脳裏を駆け巡る。それでも、この人生のすべてをもって蓄えてきた知識でも、思い当たるものはひとつとしてなかった。

  • 憧れる

    いままでと違うのは、家に帰れば彼がいるということだ。どこか電車で適当なところに行って、何をするでもなくふらふらと歩くのが好きだった。いま思えばあの世界で冒険者をしていたという感覚がそうさせるのかもしれないが、この行動は冒険なんてたいしたものじゃない。ただの散歩だ。

  • 慕う

    ※俺同盟軍兵とマキシマさんの話 「俺は兄を帝国との戦で殺されて、故郷に親を置いてきたんです。今頃は……心配させちまってるかな」 決起集会の騒然とした空気のやや外側で、なんでか俺はそんなことを話し始めていた。

  • なぞる

    この世界には、光の巫女という伝説がある。百年前の光の氾濫を止めた誰かさんの力を受け継ぐものが生まれては戦って死んでゆき、その輪廻の果てに生き残ったのがリーンなのだという。クリスタリウムの人にリーンを見なかったかと訊くと、博物陳列館に行ったと言うのでそこに向かえば、古びた絵本を読む彼女がいた。

  • 握りしめる

    ……は、っ」 拳に汗をかいていた。とても悪い夢を見ていた気がする。その記憶は脳裏のどこかにこびりついているようだったが、思い出したくはない。どうせ何度も見たあの夢だ。俺はいつまであの夢を見続けるのだろう、と少しだけ不安になる。

  • 泣く

    最後に声をあげて泣いたのは、いつのことだっただろうか。もうだいぶ幼い頃からその記憶がない。あの街で普通に育った子どもが言葉にならない声で泣いているのを見て、疑問に感じたくらいだ。それほどに何を求めるのだろう。何に悲しみ、怒りを感じるのだろうと。

  • 振り払う

    ※年齢操作 「だ、大丈夫だから」 その手を払う余地もなく、それほどの力もなく、小さな身体はひょいと抱き上げられた。こうも持ち上げられては、抵抗したらしたでそのほうが危険だ。サンクレッドはしぶしぶ目の前に現れた、目的のものを棚から取ると「もういい」と不機嫌そうに言った。

  • 眩う(まう)

    自分にとっての彼は光だった。時折弱くなったり、何かに遮られて光を翳らせたりもするが、その明かりは失われることがない。生命の灯にも似ている。ゆらゆらと揺れる姿すらも美しいと感じたのは、どちらかというと火を見る感覚に似ていたかもしれないけれど。

  • 振られる

    「ごめんな」 その言葉が何よりも残酷だった。ただ、そう感じてしまう自分のことも許しがたくて、行き場のない怒りと悲しみが腹の底で熱い血に煮詰められていく。想いを伝えればこうなると、わかっていたのに。自分はどうしようもなくばかだ。何も言葉が出ず、ただ片手で額と目を覆う。

  • 応える

    「ふたりとも、すごい連携だったな」 肩慣らしに近辺のちょっとしたいざこざを片づけてきて、石の家の共有スペースで紅茶を啜るグ・ラハ・ティアは、そう呟くと感嘆の息を洩らした。

  • 伝える

    「アルバート、こっち」 男がちょいちょいと手招きするので行ってやると、幼い子どもがするように耳に口と手を近づけて囁いた。

  • 壊れる

    「あっ……」 リーンが小さな声をあげ、ガイアは彼女のほうを向くとどうしたのよ、と言う前に状況を理解した。その華奢な指のなかで、イヤリングが壊れている。それは確か、あのサンクレッドという男に贈られたものと言っていただろうか。

  • 求める

    人は何かを追い求めることで生きている。そう思うようになったのは、彼を見ていたからだ。一見なんの欲もなさそうに見える人間ですら、ただ生きるということだけを求めている、のかもしれない。人間というのはとても奥が深く、そして同時に興味深い。しかし果てがあるものでもなくて、だからこそいままで知ることを避けていたのかもしれなかった。もちろん知識にも果てはないが、ほとんどどんな疑問にも答えが用意されているから。

  • 溶け合う

    抱きしめて背中に鼻を寄せると、ふわりと花のような香りがした。たぶん柔軟剤の匂いだ。それは季節に関係ない匂いだが、なぜか春を感じてしまう。このあたたかい陽射しのせいかもしれないし、実際に暦の上では春だからそう思い込んでいるだけかもしれない。

  • 奪う

    目を奪われた、というのはこういうことを言うのだろう、と生きていて初めて感じた。美しいものはいくつも見てきたけれど、その光はどうしようもないくらいきらきらしていて。眩しさに目を細めてしまった。

  • 出会う

    なんでもない休日に、なんでもない用事で外に出て知人に遭遇してしまう。それもいままで生活圏が同じだと認識していなかった相手だ。そんなことはフィクションにしか存在しないと思っていた。

  • 誓う

    少し時が経ってようやく理解できたのか、ずっと解ってはいたが自分からその感情に蓋をしつづけたのかは自分でもよくわからない。それでも気がつけばその腕を掴み、身体を引き寄せては抱きしめていた。驚いたのか小さく震えたのが服越しに伝わる。

  • 寂しがる

    ……だから、それは誰のせいでもないと」 「……わかってるよ。けど悔しくてさ……」 皆が寝静まった夜。正確にはウリエンジェは自室の灯りが点いていたのでまだ起きているみたいだが、静かなことには変わりなかった。

  • 自惚れる

    ……自惚れても、良いのでしょうか」 背中を向けたまま口を開く。特有の脱力感に火照っていた脳が冷めてきて、その温度差にだんだんと眠くなってきた。溶けてしまった理性が戻ってくるかと思いきや、その睡魔に邪魔されてなかなか戻ってこない。

  • 別れる

    じゃあまたな。そう言って子どもっぽい笑みを浮かべたアルバートの手を、俺は無意識に掴んでいた。あまりに夢をみすぎたのかもしれない。彼によく似た男が、自分に力を託して消えてしまう夢を。あれから少しずつその夢の頻度は低くなっていったが、どうしてもその場面が脳裏に焼きついて離れなかった。

  • 悩む

    「暗い顔してるけど、どうかしたか?」 あっけらかんと言ってみせる彼は、その原因が自分にあるとは露ほども考えていないだろう。当たり前だ。俺自身も突拍子もないことで、彼に対して悩んでいるのだとわかっている。それでもあんなリアルな夢は、そして漠然とした感覚は、あの出来事が幻ではないのだと語りかけてくる。

  • 願う

    夢をみる。それは私が闇の中に飲まれていくと、白い手が助けてくれる夢。またあるときは、光の中に飲まれていく手を掴もうと自分のそれを伸ばし、指と指が触れ合う夢。決まって起きたときはぼうっとしていた。しかし今日はリーンと遊びに行く日だ。

  • 諦める

    「いつかさ、お前と一緒にあっちへ戻れたら」 言いかけて口を噤んだ。こんなこと言ったって仕方がない。もともと彼の住む世界はここだし、あちらにはあまり良い思い出もないだろう。なにより無責任だ。彼の存在がいつまであるか、世界を渡れるかなんて、保証もないどころか可能性すらありはしないのに。

  • 追いかける

    その背を追っていると、時折なぜか焦燥感にかられる。こいつは僕が守ってやらなきゃならないんだ。そう思うと、どうしてか胸が締めつけられた。

  • 宴のさなかに

    クリスタリウムではきっと夜通し宴が続くだろう。その中心にいる英雄のことを想いながら、サンクレッドはふっと笑った。初めて会った頃は自分の力もわかっていない風だったのに、ずいぶん成長したものだ。などと少し偉そうに考えてしまう。自分自身もまた、彼に返しきれないほどの借りを作ってしまっているのに。

  • まどろみの一日

    ウリエンジェが起きてこない。彼はいつも自分たちより遅めの起床ではあるが、朝餉の用意ができるくらいには必ず起きてきていた。いままで共同生活というほどのこともしてこなかったので、元々こうなのかはわからない。しかし毎夜遅くまで文献を読みあさり、この世界のことを調べたりしているようだから無理もなく、きちんと起きてくるだけ相変わらず真面目なやつだと思っていた。

  • はかなきもの

    「戻ったら、お話があります……」 三体目の大罪喰いを倒し終えて後、クリスタリウムへの帰路でウリエンジェはそうサンクレッドに耳打ちした。

  • 或る一夜の話

    それなりに色々な経験をしてきてはいるが、まさか男として生きていてこのような瞬間があるとは予想していなかった。こちらから見下ろす端正な顔はどこか恍惚として、俺としてもさすがに好いている相手のそういう表情は、こう、胸にくるものがある。

  • 凪のような眠りを

    その日はなぜか、なんとなくあの砂の家に帰りたくなって。だいぶ石の家にも慣れていたところだったが、あの冒険者や皆の顔を見ていたら、なんだか懐かしくなった。それはもうある種の帰巣本能のようなものだ。帝国の襲撃があったときのことはあまり思い出したくないが、それも含めて色々な思い出がある。