誓う

少し時が経ってようやく理解できたのか、ずっと解ってはいたが自分からその感情に蓋をしつづけたのかは自分でもよくわからない。それでも気がつけばその腕を掴み、身体を引き寄せては抱きしめていた。驚いたのか小さく震えたのが服越しに伝わる。
「今度こそ、その手を取って離さないって……思えたんだ」
あのときは、そう思う余裕はなかった。自身のことで手いっぱいでひたすら生き残るのに、世界を救うのに必死だったからだ。そのうえで託されなんかしたら受け取らずにはいられなかった。それはただの後悔かもしれないが、少なくとも強い想いはある。熱に浮かされているだけだとしても。
……物好きなやつだな」
アルバートは曖昧に笑ったような声で言い、されるがままでいた。どうせなら拒否してくれればいいのに、そうでなければ受け入れてほしい、などと考える自分がとても卑しく思える。これはまぎれもなく独り善がりな気持ちであり、一方的な誓いであった。
「お前は……夢を見るのか? アルバート」
「だとしても。俺がこうして生きているのは変わらないし、お前もここにいて、これ以上望むことはないだろ」
……仲間がここにいなくてもか」
「ああ」
胸が締めつけられるとわかっていながら尋ね、その表情から目を背けつづけた。わかってはいるのだけれど、認めたくない何かがある。彼にとって大事なのはなんなのか、と考えるたびに、途方もなく大きなものを相手にしているような気持ちになる。ちょうどあの冥界の王と対峙したときのような。自分ではないものの体験のはずなのに、妙に生々しい感覚だけが残っていた。
きっとこの想いは満たされない。何かに縋るように、その身体を抱きしめつづけた。