「……自惚れても、良いのでしょうか」
背中を向けたまま口を開く。特有の脱力感に火照っていた脳が冷めてきて、その温度差にだんだんと眠くなってきた。溶けてしまった理性が戻ってくるかと思いきや、その睡魔に邪魔されてなかなか戻ってこない。ウリエンジェは目を閉じながら息を吐いて、言葉を続けた。
「あなたの……愛を受けていると」
少し掠れた声のせいで、その台詞はどことなく悲しげにも、寂しげにも響いた。先ほど身体を繋げた感覚のせいなのか、それが離れてしまったからなのか。それを聞くサンクレッドもまた微睡みの中にいて、互いに背を向ける形になっていた。相手が何を言っているのかはしっかり聞こえている。が、どう言ったらいいのか。答えを出せずにいた。
「それは……」
すぐに肯定を返すことができればよかったのだけれども、そう簡単に口に出すことができない。どうやって言えばいいのかも浮かばず、それこそ自分がまっとうに人を愛するなんてことができると、もしくはそれを許すことができると自惚れているのではないだろうか。無駄だとわかっていてもそんなことを考えてしまう。俺にはわからないと、あの日言った。そこから何も前進できていないのだった。
だけども、理解できていないのはその通りなのだ。
「……答えにならないが。お前がそう思っていることを……俺は、少なくとも嫌とは思わない……」
同じく掠れた声で、どうしようもない言葉を紡ぐ。曖昧で意味のないものだった。それでもウリエンジェは、ふっと笑うように息を洩らした。
「ありがとうございます。例えそれが……気の迷い、だとしても……」
後半の言葉はほとんど呂律が回らなくなっており、ほとんど睡魔に飲み込まれていった。