願う

夢をみる。それは私が闇の中に飲まれていくと、白い手が助けてくれる夢。またあるときは、光の中に飲まれていく手を掴もうと自分のそれを伸ばし、指と指が触れ合う夢。決まって起きたときはぼうっとしていた。しかし今日はリーンと遊びに行く日だ。
顔を洗い、軽い朝食をとる。朝はミルクとブレッドがあればそれでいい。ユールモアでの豪華な食事のイメージが浮かぶが、懐かしいとは思わなかった。食べ終わると歯を磨き、あらかじめ昨日のうちに選んでいた服装に着替える。今日は色々なところに行きたいと言っていたから、動きやすいよう少しラフな格好で。そして鏡の前に立ち、化粧を施す。自分でやるのにもずいぶん慣れたものだった。
……あの子……
ふっと夢の中での出来事が浮かぶ。あの場面について、あんなにあからさまで私も気づかないほど頭はお花畑ではない。その手の先にある姿は光が強くてよく見えなかったけれど、間違いなく彼女だ。何度もそんな夢を見ていて、なんだか彼女にこれから会うのが気まずい。意思は関係なく勝手にそうなっているだけだというのに。
「ああ、もう」
口紅を塗り終え、悪態をついた。今日は遊びに行くのだ、友達と。こんなもやもやした気持ちは持っていけない。これまでのことも、これからのことも忘れて楽しむのだ。頭に響く声のことも。あの日彼女を氷の中から救い出したとき、かすかに感じた痛みも。
胸の前できゅっと拳を握る。今日こそは、あの子の前でうまく笑えますように。