FF14

握りしめる

……は、っ」 拳に汗をかいていた。とても悪い夢を見ていた気がする。その記憶は脳裏のどこかにこびりついているようだったが、思い出したくはない。どうせ何度も見たあの夢だ。俺はいつまであの夢を見続けるのだろう、と少しだけ不安になる。

泣く

最後に声をあげて泣いたのは、いつのことだっただろうか。もうだいぶ幼い頃からその記憶がない。あの街で普通に育った子どもが言葉にならない声で泣いているのを見て、疑問に感じたくらいだ。それほどに何を求めるのだろう。何に悲しみ、怒りを感じるのだろうと。

振り払う

※年齢操作 「だ、大丈夫だから」 その手を払う余地もなく、それほどの力もなく、小さな身体はひょいと抱き上げられた。こうも持ち上げられては、抵抗したらしたでそのほうが危険だ。サンクレッドはしぶしぶ目の前に現れた、目的のものを棚から取ると「もういい」と不機嫌そうに言った。

眩う(まう)

自分にとっての彼は光だった。時折弱くなったり、何かに遮られて光を翳らせたりもするが、その明かりは失われることがない。生命の灯にも似ている。ゆらゆらと揺れる姿すらも美しいと感じたのは、どちらかというと火を見る感覚に似ていたかもしれないけれど。

振られる

「ごめんな」 その言葉が何よりも残酷だった。ただ、そう感じてしまう自分のことも許しがたくて、行き場のない怒りと悲しみが腹の底で熱い血に煮詰められていく。想いを伝えればこうなると、わかっていたのに。自分はどうしようもなくばかだ。何も言葉が出ず、ただ片手で額と目を覆う。

応える

「ふたりとも、すごい連携だったな」 肩慣らしに近辺のちょっとしたいざこざを片づけてきて、石の家の共有スペースで紅茶を啜るグ・ラハ・ティアは、そう呟くと感嘆の息を洩らした。

壊れる

「あっ……」 リーンが小さな声をあげ、ガイアは彼女のほうを向くとどうしたのよ、と言う前に状況を理解した。その華奢な指のなかで、イヤリングが壊れている。それは確か、あのサンクレッドという男に贈られたものと言っていただろうか。

求める

人は何かを追い求めることで生きている。そう思うようになったのは、彼を見ていたからだ。一見なんの欲もなさそうに見える人間ですら、ただ生きるということだけを求めている、のかもしれない。人間というのはとても奥が深く、そして同時に興味深い。しかし果てがあるものでもなくて、だからこそいままで知ることを避けていたのかもしれなかった。もちろん知識にも果てはないが、ほとんどどんな疑問にも答えが用意されているから。

溶け合う

抱きしめて背中に鼻を寄せると、ふわりと花のような香りがした。たぶん柔軟剤の匂いだ。それは季節に関係ない匂いだが、なぜか春を感じてしまう。このあたたかい陽射しのせいかもしれないし、実際に暦の上では春だからそう思い込んでいるだけかもしれない。

奪う

目を奪われた、というのはこういうことを言うのだろう、と生きていて初めて感じた。美しいものはいくつも見てきたけれど、その光はどうしようもないくらいきらきらしていて。眩しさに目を細めてしまった。