ウリサン

嘯く

詩が聴こえた。ふと見上げると、わざわざ登ったのか、四角い建物の屋根に男が腰掛けている。 「珍しいですね」 「ん? ……ウリエンジェか。お前こそ」

絡める

こうして改めて指先を絡めさせると、それだけで胸の高鳴りを覚える。キスをしたりそれ以上のこともやってきたが、手を繋ぐという言葉にすればあまりに些細なことが、あるいはひどく気恥ずかしいものに思えるのだと知った。そもそも誰かとこうして手を繋いだりなど、これまで生きてきてしたことがない。

疼く

※漆黒直前のあれ その連絡を聞いたとき、胸がずきりと痛んだ。サンクレッドが何の前触れもなく唐突に意識を失って倒れたと。いったい何があったのか、外傷がないなら何か特殊な術でも受けたのか——様々な考えが脳裏を駆け巡る。それでも、この人生のすべてをもって蓄えてきた知識でも、思い当たるものはひとつとしてなかった。

泣く

最後に声をあげて泣いたのは、いつのことだっただろうか。もうだいぶ幼い頃からその記憶がない。あの街で普通に育った子どもが言葉にならない声で泣いているのを見て、疑問に感じたくらいだ。それほどに何を求めるのだろう。何に悲しみ、怒りを感じるのだろうと。

振り払う

※年齢操作 「だ、大丈夫だから」 その手を払う余地もなく、それほどの力もなく、小さな身体はひょいと抱き上げられた。こうも持ち上げられては、抵抗したらしたでそのほうが危険だ。サンクレッドはしぶしぶ目の前に現れた、目的のものを棚から取ると「もういい」と不機嫌そうに言った。

眩う(まう)

自分にとっての彼は光だった。時折弱くなったり、何かに遮られて光を翳らせたりもするが、その明かりは失われることがない。生命の灯にも似ている。ゆらゆらと揺れる姿すらも美しいと感じたのは、どちらかというと火を見る感覚に似ていたかもしれないけれど。

応える

「ふたりとも、すごい連携だったな」 肩慣らしに近辺のちょっとしたいざこざを片づけてきて、石の家の共有スペースで紅茶を啜るグ・ラハ・ティアは、そう呟くと感嘆の息を洩らした。

求める

人は何かを追い求めることで生きている。そう思うようになったのは、彼を見ていたからだ。一見なんの欲もなさそうに見える人間ですら、ただ生きるということだけを求めている、のかもしれない。人間というのはとても奥が深く、そして同時に興味深い。しかし果てがあるものでもなくて、だからこそいままで知ることを避けていたのかもしれなかった。もちろん知識にも果てはないが、ほとんどどんな疑問にも答えが用意されているから。

自惚れる

……自惚れても、良いのでしょうか」 背中を向けたまま口を開く。特有の脱力感に火照っていた脳が冷めてきて、その温度差にだんだんと眠くなってきた。溶けてしまった理性が戻ってくるかと思いきや、その睡魔に邪魔されてなかなか戻ってこない。

宴のさなかに

クリスタリウムではきっと夜通し宴が続くだろう。その中心にいる英雄のことを想いながら、サンクレッドはふっと笑った。初めて会った頃は自分の力もわかっていない風だったのに、ずいぶん成長したものだ。などと少し偉そうに考えてしまう。自分自身もまた、彼に返しきれないほどの借りを作ってしまっているのに。

まどろみの一日

ウリエンジェが起きてこない。彼はいつも自分たちより遅めの起床ではあるが、朝餉の用意ができるくらいには必ず起きてきていた。いままで共同生活というほどのこともしてこなかったので、元々こうなのかはわからない。しかし毎夜遅くまで文献を読みあさり、この世界のことを調べたりしているようだから無理もなく、きちんと起きてくるだけ相変わらず真面目なやつだと思っていた。