宴のさなかに
クリスタリウムではきっと夜通し宴が続くだろう。その中心にいる英雄のことを想いながら、サンクレッドはふっと笑った。初めて会った頃は自分の力もわかっていない風だったのに、ずいぶん成長したものだ。などと少し偉そうに考えてしまう。自分自身もまた、彼に返しきれないほどの借りを作ってしまっているのに。
2019~ FF14 文章2019~,FF14,ウリサン
まどろみの一日
ウリエンジェが起きてこない。彼はいつも自分たちより遅めの起床ではあるが、朝餉の用意ができるくらいには必ず起きてきていた。いままで共同生活というほどのこともしてこなかったので、元々こうなのかはわからない。しかし毎夜遅くまで文献を読みあさり、この世界のことを調べたりしているようだから無理もなく、きちんと起きてくるだけ相変わらず真面目なやつだと思っていた。
2019~ FF14 文章2019~,FF14,ウリサン
はかなきもの
「戻ったら、お話があります……」
三体目の大罪喰いを倒し終えて後、クリスタリウムへの帰路でウリエンジェはそうサンクレッドに耳打ちした。
2019~ FF14 文章2019~,FF14,ウリサン
或る一夜の話
それなりに色々な経験をしてきてはいるが、まさか男として生きていてこのような瞬間があるとは予想していなかった。こちらから見下ろす端正な顔はどこか恍惚として、俺としてもさすがに好いている相手のそういう表情は、こう、胸にくるものがある。
2019~ FF14 文章2019~,FF14,R18,ウリサン
凪のような眠りを
その日はなぜか、なんとなくあの砂の家に帰りたくなって。だいぶ石の家にも慣れていたところだったが、あの冒険者や皆の顔を見ていたら、なんだか懐かしくなった。それはもうある種の帰巣本能のようなものだ。帝国の襲撃があったときのことはあまり思い出したくないが、それも含めて色々な思い出がある。
2019~ FF14 文章2019~,FF14,ウリサン
レストイン・ピース
暗闇のなかで、誰かが自分を嗤う。それに伴う後悔の念、伸びてくる包帯の巻かれた腕。傷口が開いたのか血が滲んでいて痛々しい。が、男はいやに元気そうに笑いながら、俺の首を掴んで地面に押し倒した。ひやりと背中に当たる冷たいそれはまるで刃のようで、死が間近に迫っているような、そんな心地がする。
2019~ 文章2019~,オクトラ,テリアフェ
バッドステータス
盗賊はそのとき久々に、状況の理不尽さに嘆息した。大概のことは持ち前の能力でなんとかしてきたが、人間、もしくは生き物としての本能の前では如何ともしがたい。それにしてもこの動悸と下腹部の熱はどうして起こされたものなのだろうか。
2019~ 文章2019~,R18,オクトラ,テリアフェ
伸ばす先に
「んじゃあ、偉大な盗賊様に乾杯!」
「……声がでかい」
「いいじゃねえか。周りも騒いでるんだしよ」
「誰が聞いてるかわからん。前に話しただろう」
テリオンはそう言って、アーフェンに強引にぶつけられたグラスを傾ける。
2019~ 文章2019~,オクトラ,テリアフェ
偶然を重ねたきみと
わからない。どうしてかはわからないが、気がつくと彼の動きを目で追っている。その無造作に伸ばされた黒い髪、のひと房は猫の尻尾みたいだ。いや、実際彼は猫なのだそうだけれど。
2019~ 文章2019~,アナデン,マイアル
孤独であったからこそ
それは裏切り者の名、と呼ばれたこともある。無理もないことだ。仲間でも始末するのが俺の任務ならば、俺に仲間など要ることもないし、出来るわけもない。そう思っていたのが少し前。いや、いまでも思っていることは思っているが。
2019~ 文章2019~,オボアマ,チェンクロ
子供と大人とそのあいだ
「ウマタロウ、ほら、あーん」
「……いい加減帰るぞ。ヒロシ」
完全に出来上がっている、と気づいたときには遅かった。
2019~ 文章2019~,アトビギ,ヒロウマ
不定の体温
あたたかい。人はそれを肌で感じるだけでなく、心で感じることもあるのだと書物にあった。捜査資料以外のものを読むようになったのはもちろん最近であり、そもそも以前は証拠品でない紙の本に触れたことすらなかった。きっかけはマーカスに勧められたことで、彼はかつて所有者であった男の家で度々それを読んでいたらしい。別の話だが、同じアンドロイドでも役割が違えば生活もまるっきり違うということを、知識ではなく心で理解したのもそのときだった。
2019~ 文章2019~,DBH,ハンコナ