現パロ

舐める

得てして昔馴染みとは、まったく関係ないところでばったり会ってしまうものだ。特にあまり会いたくない相手に限って。たまたまその日は仕事の激務に疲れて、家の近くにある川を跨ぐ大きな橋の欄干に、肘を預けてぼうっと突っ立っていた。

憧れる

いままでと違うのは、家に帰れば彼がいるということだ。どこか電車で適当なところに行って、何をするでもなくふらふらと歩くのが好きだった。いま思えばあの世界で冒険者をしていたという感覚がそうさせるのかもしれないが、この行動は冒険なんてたいしたものじゃない。ただの散歩だ。

握りしめる

……は、っ」 拳に汗をかいていた。とても悪い夢を見ていた気がする。その記憶は脳裏のどこかにこびりついているようだったが、思い出したくはない。どうせ何度も見たあの夢だ。俺はいつまであの夢を見続けるのだろう、と少しだけ不安になる。

振られる

「ごめんな」 その言葉が何よりも残酷だった。ただ、そう感じてしまう自分のことも許しがたくて、行き場のない怒りと悲しみが腹の底で熱い血に煮詰められていく。想いを伝えればこうなると、わかっていたのに。自分はどうしようもなくばかだ。何も言葉が出ず、ただ片手で額と目を覆う。

溶け合う

抱きしめて背中に鼻を寄せると、ふわりと花のような香りがした。たぶん柔軟剤の匂いだ。それは季節に関係ない匂いだが、なぜか春を感じてしまう。このあたたかい陽射しのせいかもしれないし、実際に暦の上では春だからそう思い込んでいるだけかもしれない。

待つ

それはとても寒い日で、だのに約束の時間になっても彼は来なかった。待たされるのは苦手ではないのだけれども、こうも寒いと相手に非がなかったとしても辛いものは辛い。雪が降っていないのはまだ救いだったが。

過ぎる月日はあたたかく

販売ページ  サンプルFF14/ウリサン現パロ本の三冊目です。二冊目はこちら。今回は二人の話をメインにして、春夏秋冬をイメージした4編を収録しています。旅行に行ったり初詣に行ったり。この本をもって現パロはひと段落します。全年齢/A6文庫版/…

続く日々の地平にて

販売ページ  サンプルFF14/ウリサン現パロ本の二冊目です。一冊目はこちら。前回同様に他NPCとわちゃわちゃしたり、付き合い始めているので若干良い雰囲気になったりします。全年齢/A6文庫版/本文53p/頒布価格500円