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想う

この地はどこも寂しげで残酷で、だけどどこかにあたたかさが置き去りにされているような、そんな気がした。それを見つけてやらなければ。いくつでも、あるだけかき集めて彼に届けてやらねばならない。ボクは知らず拳を握り、足元にぴょんぴょんと跳ねてきたメタッツが不思議そうに見上げてきた。

願う

夢をみる。それは私が闇の中に飲まれていくと、白い手が助けてくれる夢。またあるときは、光の中に飲まれていく手を掴もうと自分のそれを伸ばし、指と指が触れ合う夢。決まって起きたときはぼうっとしていた。しかし今日はリーンと遊びに行く日だ。

望む

突き詰めれば、多くの人を助けたいというのも欲望である。人の心について考えていると、これまでに出会った多くの人を思い出してやりきれない気持ちになってしまう。手を伸ばせなかった人。諦めてしまったもの。ただ見ているしかできなかった自分。

懐かしむ

広い空を見ると懐かしくなる。思えばあれが始めて三人で攻略した迷宮だった。旅の中では明らかに広すぎる灯台だったりやたら落とし穴や惑わしの多い洞窟だったり迷宮じみた場所に悩まされたが、それを思えばあの塔は道順についてはやさしかった。そのかわり俺は何度か落ちかけてふたりに助けられたのだけれど。

諦める

「いつかさ、お前と一緒にあっちへ戻れたら」 言いかけて口を噤んだ。こんなこと言ったって仕方がない。もともと彼の住む世界はここだし、あちらにはあまり良い思い出もないだろう。なにより無責任だ。彼の存在がいつまであるか、世界を渡れるかなんて、保証もないどころか可能性すらありはしないのに。

焦がれる

会いたいと思った。いつもの腑抜けた顔を見て、その肩を叩いて、手を合わせて笑いあいたい。だがそれはいまは叶わぬことで、叶えてはいけないこともわかっていた。これ以上一緒にいるべきじゃないと気づいていたのは、きっと最初からで。オレがどうやってもな…

宴のさなかに

クリスタリウムではきっと夜通し宴が続くだろう。その中心にいる英雄のことを想いながら、サンクレッドはふっと笑った。初めて会った頃は自分の力もわかっていない風だったのに、ずいぶん成長したものだ。などと少し偉そうに考えてしまう。自分自身もまた、彼に返しきれないほどの借りを作ってしまっているのに。

まどろみの一日

ウリエンジェが起きてこない。彼はいつも自分たちより遅めの起床ではあるが、朝餉の用意ができるくらいには必ず起きてきていた。いままで共同生活というほどのこともしてこなかったので、元々こうなのかはわからない。しかし毎夜遅くまで文献を読みあさり、この世界のことを調べたりしているようだから無理もなく、きちんと起きてくるだけ相変わらず真面目なやつだと思っていた。

或る一夜の話

それなりに色々な経験をしてきてはいるが、まさか男として生きていてこのような瞬間があるとは予想していなかった。こちらから見下ろす端正な顔はどこか恍惚として、俺としてもさすがに好いている相手のそういう表情は、こう、胸にくるものがある。

凪のような眠りを

その日はなぜか、なんとなくあの砂の家に帰りたくなって。だいぶ石の家にも慣れていたところだったが、あの冒険者や皆の顔を見ていたら、なんだか懐かしくなった。それはもうある種の帰巣本能のようなものだ。帝国の襲撃があったときのことはあまり思い出したくないが、それも含めて色々な思い出がある。