DQB2

信じる

信じていたのに、と人は言う。そのとき同時に、自分が見ていたものはただの思い込みだったのだと失望する。それが裏切りというものだが、一般的には一時的な誤解であったり、本当にただの思い込みである場合が多い。ひとを簡単に裏切れるものなんて、実際はそんなに存在しないのだと思う。

戯れる

……ん」 ぺろ、と首筋を舐められた。時折彼の行動は人というよりも獣に似ていて、それでも確かに人の形をしているのだからひどくアンバランスに思える。目を閉じてその背中に腕を回して抱きしめる。服越しに少し早い脈拍が感じられた。彼のその行為に別段意味はないのだろう。

重ねる

……やっぱり、力が入りすぎなんだと思うけど……」 「むむむ……ぐぐ……」 理解しているとばかりに言葉で答えずただ威嚇する獣のようなうなり声を洩らすシドーを見て、つい浅黒い手に自分のそれを重ねてしまった。

ひとり待つ

その日は雨が降っていた。この島に魔物の群れが襲ってきて、あのふたりを島の外へ無理やり送り出してから初めての雨だ。島から魔物が去って行って、少女はずっとこの島唯一の船着き場で過ごしていた。

躊躇う

触れれば壊れてしまうのではないか。そんなことを思うのはとても馬鹿らしいけれども、そのときは本気でそう思っていたのだ。彼はとても強く頼りになる存在なのに、時折ひどく繊細で、薄いガラスを加工するときのような緊張感と恐怖感に晒されるときがある。自分が嫌われるだけならまだましだが、何かの拍子に存在ごと崩れ落ちてしまうような。

待つ

それはとても寒い日で、だのに約束の時間になっても彼は来なかった。待たされるのは苦手ではないのだけれども、こうも寒いと相手に非がなかったとしても辛いものは辛い。雪が降っていないのはまだ救いだったが。

逃げる

胸の奥がざわざわする。いつか誰かがそんなことを言っていた気がするが、長らくオレにはその感覚が解らなかった。これは不安というやつなのだろうか。一度自分が自分じゃなくなって、アイツに助けられて、ほとんど成り行きで世界を作り直してから、オレは少しずつ変わっていっている。

見つめる

初めて会ったときから、真っ赤な瞳が印象的だった。あるいはそれと目を合わせたときに、もしかしたら彼は自分とは違う存在かもしれない、なんて考えていた気がする。あれから色々なことがありすぎて、実際にどう思っていたのかまではうまく思い出せないのだけれど。

想う

この地はどこも寂しげで残酷で、だけどどこかにあたたかさが置き去りにされているような、そんな気がした。それを見つけてやらなければ。いくつでも、あるだけかき集めて彼に届けてやらねばならない。ボクは知らず拳を握り、足元にぴょんぴょんと跳ねてきたメタッツが不思議そうに見上げてきた。

焦がれる

会いたいと思った。いつもの腑抜けた顔を見て、その肩を叩いて、手を合わせて笑いあいたい。だがそれはいまは叶わぬことで、叶えてはいけないこともわかっていた。これ以上一緒にいるべきじゃないと気づいていたのは、きっと最初からで。オレがどうやってもな…