初めて会ったときから、真っ赤な瞳が印象的だった。あるいはそれと目を合わせたときに、もしかしたら彼は自分とは違う存在かもしれない、なんて考えていた気がする。あれから色々なことがありすぎて、実際にどう思っていたのかまではうまく思い出せないのだけれど。
「きれいだなあ」
思わず口に出てしまう。こうしてゆっくりふたりで部屋で過ごすのも、監獄島のときをカウントしなければ初めてのように思う。しかもあれは顔すら見えない暗闇だったのだから確実にノーカンだろう。頰をするりと撫でると、彼は擽ったそうに身をよじった。いつもなら文句のひとつも飛んできそうなものだが、今日はなんでか大人しい。借りてきた猫という言葉があるが、まさにそんな感じだった。
「大丈夫? シドー」
「……なんだよ。キレイって」
声をかけると、ふいに彼はその眼を逸らして心なしか口を尖らせた。
「キミの眼が、そう……宝石みたいで」
思ったまま伝えれば、さっと頰が朱に染まる。彼の少し濃い色の肌ではあまりそういった反応がわかりづらいが、室内の灯りが点けっぱなしなのもあり、とてもわかりやすい。
「からかうな」
「本心だよ」
憎まれ口をたたく唇が愛おしくて、衝動的に自分のそれを重ねた。キスなんかもちろんしたこともなかったが、ボクはどうやらこの世界での色々な経験のせいで自分の衝動に抗えなくなってきているらしい。シドーは驚いたのか肩を掴んできたが、はっと何かに気づいたようにその手を止めた。そこから力が抜けていき、受け入れてくれたのだと感じる。仕方なくかもしれないけれど。
しばしその感触を愉しむと、身体ごと離した。見つめてくる瞳はどこか潤んでいるようにも見えて、なんだか切なくなる。
「もう寝よっか」