「……やっぱり、力が入りすぎなんだと思うけど……」
「むむむ……ぐぐ……」
理解しているとばかりに言葉で答えずただ威嚇する獣のようなうなり声を洩らすシドーを見て、つい浅黒い手に自分のそれを重ねてしまった。手伝ってやる気はない、というより、彼の性格的に無理に手を出してはいけないとわかっていたのだけれども。しかし出してしまった以上、さっさと引っ込めてしまうのも癪だ。
「力抜いて。ほら、指はこうやって握りこむ」
道具を握る指を、上からできるだけ力を込めないように、優しく包みこむように触れてやる。もしかしたら即座に反応して怒られるかもしれないと思ったが、ちらりと様子を伺うと、どうも重ねられた手を見て固まっているみたいだった。あまりに予想外の反応なので少し焦る。
「……シドー?」
「んあ!? ……あ、ああ……つ、続けてくれ」
異様に動揺した彼はそれを隠すように続きを促すと、台に置かれた素材のほうに目を向けた。大丈夫なのだろうか。思いつつ、作業手順の説明をした。
「……で、ここで振り下ろすときに勢いをつけすぎない。強すぎると、必要のないところまで壊れちゃうから……」
「知ってるぞ。手加減だ」
「そうそう。キミだってミルズたちと腕相撲するときは手加減くらいするだろ? そういう感じ」
「はあ? オレはそんなことしない」
「……だよね」
でも、このときはしてもらわないと困る。作業台の下に落ちているいくつかのものは、シドーが物作りに至らず壊してしまったものだ。抵抗されないのをいいことに、ボクは説明と指示を交えつつ文字通りシドーの片方の手を借り、それを造っていく。
「できた!」
「……すごいな、ビルド。オレの手を使って……完成させるとは」
「うん。だってシドーの手は、ボクらと同じだから」
「……そうか」
借りていたほうの手の甲をさすり、その手を握ったり開いたりして、シドーはどこか満足そうに笑って答えた。