「……ん」
ぺろ、と首筋を舐められた。時折彼の行動は人というよりも獣に似ていて、それでも確かに人の形をしているのだからひどくアンバランスに思える。目を閉じてその背中に腕を回して抱きしめる。服越しに少し早い脈拍が感じられた。彼のその行為に別段意味はないのだろう。
「疲れてるのか?」
「ううん、まあ……」
「確かに、今日はいろいろなことがあったからな」
彼の言うとおり、今日一日はいつもと違ってたくさんの出来事があった。朝早く起きて素材島へ行き、大きなモンスターに挑んではぼろぼろになったり、帰ってきて手に入れた素材の使いどころを探していたら開拓地の住民に頼まれごとをしたり、そのあと新しい素材を使ってものを作ったり。普段は一日過ぎるのがとても早いのだが、なぜかとても長い一日だったように感じる。
だからこそ、彼と同じ寝床にいるととても安心したし、こんなことを言えば確実に怒られるだろうけど、同時にすごく癒された。浅黒い額に額を寄せると、つられたように頰に唇を触れられる。鳥が啄むようなキスだった。
「……それさ、無意識でやってるの?」
「んあ? なにがだよ」
どんな答えが返ってくるかはあらかじめわかっていたので驚きもないが、こうもあっさり予想が当たってしまうとそれはそれで悔しい。などと思うのはただの自分勝手で。できることならそれこそ頭をからっぽにして、ずっとこの幸せに浸っていたい気もする。
「ほんとヘンなヤツだな、オマエ」
「キミも人のこと言えないだろ」
どちらともなく吹き出して、肩を震わせて笑った。やっぱり今日という一日は長い。