突き放す
「もう……俺のことは、放っておいてくれ」
そう言った背中は、いつか見たような孤独にまみれていた。
2019~ 一日一文企画 文章ラルグリ,リィンカネ
気にする
「この戦争が終わったら、何するかって。考えたことあるか?」
ずきり、と胸が痛んだ。そんな風に考えたことはない。すべて奪われたあの日からずっと、戦場で生きるということしか頭になかった。
2019~ 一日一文企画 文章ラルグリ,リィンカネ
悟る
彼が人間だったら、と考えることはもちろんある。自分の兄だったら、なんて思ったときもあった。兄というのはどういう存在なのか、第一王子という身分だったものとしてはあまり想像がわかないが。
2019~ 一日一文企画 文章ディミリオ,リィンカネ
妬む
羨むということは、どこまで行けば妬みになるのだろうか。所謂普通の人間の生活を、羨ましく思ったことはもちろんある。妬ましいというほどではない。俺が失ったものは、どうあっても戻りようがないからだ。
2019~ 一日一文企画 文章ラルグリ,リィンカネ
狙う
狙いが正確だ、と彼は言った。正しくは、狙っている、という自覚はない。決められた場所に銃口を向けて弾を引き金を引けば良いだけだ。
2019~ 一日一文企画 文章ディミリオ,リィンカネ
失う
伸ばした手の先にあるものが、悉くその手をすり抜けては、どこかへと消えていく。掴んだかと思えば、弱々しい光を放って、最後にはそれもまた消えてしまう。
2019~ 一日一文企画 文章ラルグリ,リィンカネ