狙いが正確だ、と彼は言った。正しくは、狙っている、という自覚はない。決められた場所に銃口を向けて弾を引き金を引けば良いだけだ。相手との距離と角度、弾の速度を加味して、一発目は急所を外す。それでも戦意を失わない場合は、二発目で急所を撃ち抜く。なるべく殺したくはない、というのは彼の望みだ。だいたいの輩は、いかめしい銃と男のそれを扱う腕に恐れをなして、必要もない命乞いまでする。どうせ見逃してやるのだというのに。
「君は優しいね」
時折、彼はそうも言う。優しいという言葉が何を指すのかは、人間でない機械の男にはわからない。何もかも自覚がないのだ。一般的に人が片手で扱うには大きすぎる銃を分解し、メンテナンスしながら、男は考えた。
「僕はまだ、死ぬわけにはいかない——けれど、もし動けなくなってしまったら……」
廃屋の床に横たわる彼は毛布に包まりながら、眠れないのか、訥々と語り続けていた。痛みを感じる胸を押さえて、空いている手でこめかみに触れる。
「きっと、苦しまずに」
その後ろにつけた言葉は、男が銃を組み立てる金属の音に隠れてしまった。なんと言ったのだろう。彼はどこか満たされたような笑みを浮かべ、ひとつ咳をして、瞳を閉じる。男は何も言わなかった。彼が休んでいる間、近づく足音があればすぐに排除しなくてはならないからだ。それでも、その思考ルーチンの隅には、なるべく殺さないようにという言葉が決して消えない光のように存在していた。