「つかまえた」
小さな身体は、こちらがどんな体勢でも抱きしめれば腕の中にすっぽり収まってしまう。いつもなら彼なりに無駄な抵抗をするのに、今日はされるがままだった。ベッドの上とはいえまるで借りてきた猫みたいだ。彼の名前とは関係なく。
「カッツェ?」
冗談めいた言葉を口に出したのに特に反応がないのが寂しく思えて、その名前を呼んだ。
「……きみは、私を子ども扱いしていないか?」
普段はきみなんて呼ばないのに、やっぱり様子がおかしい。ロベリアはカッツェリーラが不機嫌であることにはまったく気づかず、普段通りの軽い調子で返した。
「いやだなあ。オレがキミを、いつ子ども扱いしたって」
「いまのような行為だ」
言葉を遮られたロベリアはむむ、と怪訝そうに眉根を寄せる。さすがに拒絶されたということは理解できたが、それで簡単に手を離すような男ではなかった。何よりもこの、腕の中に収まっているという感覚が。どうしようもなく満足感を得てしまい、愛しさすら感じる。もう新しい音は必要ないが、彼はどんな音をその裡に秘めているのか、暴きたくなる瞬間がときどきあった。それを実現することはきっとないだろうが。
「……聞いているのか」
「聞いているさ。でもね……」
「なんだ」
「ハグするのが……こんなに心地よいものだなんて」
通常と違い、固めていない茶髪に頰を寄せると、独特の匂いがした。片腕で膝まで覆い、足を曲げて文字通りハーヴィンの体躯を全身のうちに収める。決して子ども扱いなどではない。ただロベリア自身はそれと気づいていなかったが、その感情はおそらく支配感、全能感もしくは優越感の一部だった。