想う

この地はどこも寂しげで残酷で、だけどどこかにあたたかさが置き去りにされているような、そんな気がした。それを見つけてやらなければ。いくつでも、あるだけかき集めて彼に届けてやらねばならない。ボクは知らず拳を握り、足元にぴょんぴょんと跳ねてきたメタッツが不思議そうに見上げてきた。
「どうかしたの? ビルド」
……大丈夫だよ。たいしたことじゃない」
そのメタルスライムは、どうやらボクよりも幼く純粋な子どものようだった。魔物にも年齢や性格があるなんてことはあっちにいた頃は全然思いもしなかったけれど、考えてみれば普通のことだった。どんなに恐ろしいドラゴンでもひとりでに生まれてくるわけではない。誰かに命を繋いでもらって生きているのだ。
「トモダチのこと、考えてたんだよね」
どきりと胸が鳴る。思わず咳き込むところだったがなんとか抑えて、その無垢な瞳と視線を合わせた。
「この世界が彼なんだ。きっとまだもう少しのところで抵抗してる。それがあの腕で、なんでも吸いこむ穴で……
気がつけばつらつらと喋っていて。それは口からの出まかせなどではなく、本心だった。あの地面から生えた角や鱗を壊して回収するたびに、その内側で彼もまた闘っているのだと。だったら少しでもそのかけらを拾って、ここにいるみんなの心も拾って、会いに行かなきゃならない。いつしかそう思うようになっていた。ボクが箱舟を作るのはそういう理由だ。少しでも前を向けるように。彼に会えたとき、きちんと目を覚ましてあげられるように。
「ビルドなら大丈夫だよ」
メタッツは純真な子だ。まだ何にも染まらない無垢な子どもだった。だからこそ、この地で初めに出会ったのが彼でよかったと思う。ふとその場に腰を下ろし、丸みを帯びた金属の身体を撫でた。
「ありがとう、メタッツ」
「えへへ」