「お前らさ、なんか似てきてない?」
「そうか?」
「いや、俺の気のせいならいいけどよ……」
坂本竜司は少し大袈裟に溜め息をつくと、再び昼の渋谷を歩き出した。後ろについていくふたりの少年は互いに顔を見合わせ、首を傾げる。完全に前を向いている竜司はそれを見てはいないが、見ていたら確実に先ほどの発言が決して気のせいではないと感じていたことだろう。
「拗ねるなよリュージ。ま、ワガハイにはアン殿が……」
「拗ねてねーよ。慰めにもなってねーし」
黒髪の少年の肩からぴょんと跳んだ猫は、器用に前を歩く竜司の肩に飛びついた。やれやれと溜め息をつき、後頭部を掻く。
「んで、どこ行くよ? プレゼントっつってもな……」
佐倉双葉が怪盗団に入ってから少し、夏休みも終わろうとしていた。彼女の件にけりがついてから遊びに宿題にとなんだかんだ忙しくしていたが、ふとこの機会に日頃の感謝と、双葉の歓迎の意を込めて女性陣に贈り物をしようと提案したのは、怪盗団のリーダーその人だった。
「女子なら、雑貨屋なんかがいいんじゃないか?」
「お前、意外とそういうの知ってんよな」
「ああ。俺もそう思って、詳しい人に聞いておいた」
「お前の人脈も相当ナゾだわ……」
あちーし早く行こうぜと急かすと、提案の主はポケットからスマートフォンを取り出し、ナビよろしく道案内を始める。幸い駅前からそう遠くない場所のようだった。三人と一匹はたわいないことを互いに口にしあいながら、同じような夏休みの学生たちで溢れる人混みを掻き分け歩いていくのだった。
辿り着いたそこはここ数年でチェーンを広げてきたブランドの店で、なるほど高校生でも手に取りやすい価格とデザインのものも多かった。意外にも女子ばかりという雰囲気ではなく、時折彼らのような男の集団も見える。
「……祐介、これは?」
「ふむ……お前もわかってきたようだな」
「いや、もうちょい実用的なモンにしようぜ」
「この猫の箸置きはどうだ? ワガハイには劣るが、なかなか愛らしいぞ」
やいのやいのと言い合いつつ、それぞれの思う贈り物をいくつか選別して、実際仲間である彼女らに贈るものを絞っていく。初めはまったく意見が合わなかったが、不思議と少しの時間かけて選択肢を絞っていけば決まっていくものだ。会計を終え、一度まとめて払ったリーダーに各々割り勘した分を払いつつ、竜司はぼそりと呟いた。
「……やっぱさ、お前ら似てきたっつーか」
「ん?」
「喋り方、は元々そんな感じだけど……好みとかさ。染まってるっつーの? どっちがどっちに、ってわけでもねーけど」
青い髪の少年は瞬きし、もう片方の少年は少し決まりが悪そうに頰を掻く。しばしの沈黙が流れ、鞄の中で身を潜めていた黒猫がひょいと顔を出してひと鳴きした。
「なんだ、やっぱ寂しいんじゃねえかリュージ」
「だから違えって!」
また一人と一匹が騒がしく言い合いを始める横で、ふたりは一瞬だけ視線を合わせて互いにくすりと笑った。