その背を追っていると、時折なぜか焦燥感にかられる。こいつは僕が守ってやらなきゃならないんだ。そう思うと、どうしてか胸が締めつけられた。ダンジョンの攻略を終えて、彼は少し疲れたなと言い、手を差し出してくる。それ以上の言葉はなくても言いたいことはわかった。手を取り、ゴブレットビュートにある家へのテレポを唱える。
「やっぱここが落ち着くなぁ」
「ここは僕の家なんだが」
きぃ、と音を立てて扉を開けると使用人が出迎えてくれ、僕より元気に挨拶をする彼は迷わず地下への階段を降りた。どうやら本当に疲れているらしい。やれやれと思いながらついていくと、これまた迷わず風呂場に向かう姿があった。
「そうだ、アンタも一緒に入ろうぜ」
「……なんで男同士でわざわざ……」
「全然おかしくないだろ。ほら、脱ぎなって」
言いながら半分本気で脱がそうとしてくる。体格差的にろくに抵抗できず、途中で折れて自分から脱いだ。
風呂の水が流れる音を聴きつつ、なみなみと注がれた湯に身体を浸す。彼は胸の上まで浸かり背凭れに腕を広げると、心底気持ち良さげな声を出した。その身体にはいくつもの傷が残っている。僕が治しきれなかったもの。彼もかなり成長して、あの頃は自分もいくつか受けていた傷が、いまやひとつもない。いつからか僕が追いかける側になってしまっていた。ロールの役割とか、そういったものは関係なく。
「なんか……悔しいな」
「ん? どうかしたか? 相棒」
「いや。なんでもない」
顔の半分を湯に埋めて、ぶくぶくと泡を生み出していた。まだ何も伝えるわけにはいかない。未だ。