慰める

「大丈夫だから」
呟いた。抱きしめた身体はまだ震えていて、彼もまた自分と同じなのだと思わされる。当たり前のことなのだが。誰だって死ぬのは怖いし、大事な人が亡くなるのも嫌だ。自分や彼だけではなくて他の仲間たちもそうだろう。みな命の重さがわかるものたちだ。
薄い背中を優しく叩く。まるで幼い子どもをあやすような感覚だが、考えてみれば祐介は長らく囚われていた鳥籠から放たれたばかりだった。その居心地が良かったにしろ悪かったにしろ、ひとりで歩かなければいけないというのは生半可なことではない。そのなかで親しいものを亡くすという体験は彼にとって初めてではなく、危うくそれをまた味わわせることになる可能性があったというのは、自分としても肝に命じておかなければいけない。
「万が一のために、覚悟はしていたつもりだった。それでも俺は……母さんのように、お前まで失ってしまうのかと考えて……恐ろしくなった」
震えた声と呼吸で、祐介は訥々と自分のうちにあるそれを吐露した。表情は見えない。ただその口ぶりと、抱き返してくる細い腕と指があまりに感情を表していて、少しいたたまれなかった。
「ありがとう、祐介」
それでも、不思議と謝罪の言葉は出てこなかった。どちらかというと出てこれなかったというほうが正しいのかもしれない。彼の感情に対してどれだけの言葉を積めば謝ることができるのかわからない。そういった意味ではこの感謝は慰めにもならないただの言葉だけれど。
……狡いな、お前は」
ぐす、と彼は鼻をすすり、台詞とは裏腹にどこか笑っているような調子で言った。