文章

触れ方をしらないのはお互いさま

「お前は……どうなんだよ」 土御門の肩を強めに掴んで離さないまま、これ以上ないほど真面目な顔で上条は尋ねる。その目にはいつもとは少し違う輝きが宿っていて、見つめていて目眩を起こすほど眩しくて、それでも土御門は、彼のために目を逸らさなかった。

誰がための葛藤

「幸せなのか?」 「くだらねェことを聞くンじゃねェよ」 そう吐くと、土御門はくすりと笑った。ばかにされているようで腹が立つ。そうではないとわかっていても。

詰まるところ、静寂

じりじり、肌の焦げる音が聞こえそうなくらい日射しが強い。8月の半ばと云えば当然なのだが、手に持った棒アイスが溶けるのは困る。でも部屋にいれば風がなくてそれはそれで暑いし、と云った具合。

その姿に触れたいと思うのが

よく聞くが恋と云うものは複雑でしかし単純なものだ。どんな紆余曲折があったとして、一目惚れだって友情の延長線だってそのときの気持ちは結局「好き」の一言以外には表せない。と思う。

いらいら

もう出会うことはないと思っていたが。別れも告げず、それがあの集団だったと思っていたのだが、偶然とは恐ろしいものだ。

積極的じゃない彼へ

箸で掴んだ自作ミニハンバーグを土御門の口に運びつつ、上条は非常に複雑な表情をする。 やっべー財布忘れちゃったなーとか云いそうな顔で、しかし云わずあからさまにこちらを見ているものだから、性分的に放ってはおけなかったのだ。

誤魔化せるとでも

「別に悪いことじゃないだろ、むしろカミやんは笑わなさすぎ」 そう云って、ぐいーっと真横に右頬を引きのばされた。いや、これ笑わせようとしてるってより遊んでるだけじゃないのか。妙に強い力のせいで全然口が動かせないので、言葉にならない。ただの唸り声だ。

思考

「……寝てしまった、か」 こんな状況に体勢で寝られるとはなんと無駄に器用な男だろう。逆に不器用と云ってもいいか。もしくはそんなに眠かったのか。

絡まる

ぼうっと何も考えず、無心にサングラスの奥を見つめてみる。意味ありげにも無計画そうにも見える笑みは何を考えてるのか本当にわからない。俺の周りはなんとなく直情的なやつが多くて(あとで云ったら人のことは云えないと諭された、少し心外だが確かに)珍しい人物かもしれない。

暑さにやられたのです

「……そういえば屋外プールとか、あったんだな……ここ」 「そうだな、いつも校舎とか校庭にいるから、あんま気づかねえよなー」 「そりゃ、水泳の授業くらいあるんだよなぁ……」

綺麗じゃない告白

「……え、いや、お前って音無が好きなんじゃなかったの?」 「見た目通りの鈍感なのか、貴様は」 「それ、答えになってないって……」

団結力の無駄遣い

「どうして黙ってたのよ」 「え、あ、いや、……」 そんなん誰だって隠したくなるだろう、むしろ怒られる理由がわからないんだが。音無と日向は互いにそう思いながら、腕組み仁王立ちするゆりの前に正座していた。