淋しがりと煙草
ライターで火を点けてから、煙草の煙は嫌いだと云っていたあいつの顔が浮かんだ。いまとなっては無意識のうちでやっていることだが、独りでいるときだけ吸うようになったのは、そういえばそのせいだ。
~2012 文章ダン戦,蓮拓,~2012
後悔ならば置いてきた
久々に会った八神さんは、随分と髪が短くなっていた。正直に云えば一目見たときは誰かと思った。あの赤が波打つような髪が風に流れるのを見るのは、嫌いではなかったのだが。少し残念に思う。
~2012 文章ダン戦,英拓,~2012
つまり、愛してるってこと
「……暑いよな、絶対」
「いや全く」
「嘘をつけ、嘘を! と云うか俺が暑い」
「うるさい、耳のすぐ近くで叫ぶな」
~2012 文章ダン戦,蓮拓,~2012
その目で見ていて
初めて会ったときは、柄にもなくものすごく緊張した。拓也さんはレックスの相棒であり、レックスから勧誘された組織のリーダーだった。緊張しないはずがない。
~2012 文章ダン戦,郷拓,~2012
感覚の麻痺
※女体化ネタ「ちょ、っと、待て、ばかッ」
「少しだけ、少しだけだ」
「は、な、れ、ろ…!」
「……ふむ」
~2012 文章ダン戦,蓮拓♀,~2012
もう一度眠る前に
帰ってくるなり、俺の姿を視界に認めるとユジンは、脱力して倒れこんできた。いきなりだったので慌てはしたが、どうにか彼を支える。一体どうしたのだろう。順当に考えれば仕事の疲れだろうけれど。
~2012 文章ダイユ,ダン戦,~2012
いっそすべて忘れてしまえば
「俺たちのしていることは、本当に意味があるんだろうか」「どういうことだ?」「目標に近づくたびに思う。俺たちが海道義光を打ち倒しイノベーターを崩壊させ、そうして世界はどうなるのか」「ばかな、奴らはエターナルサイクラーを悪用しようとしているんだ…
~2012 文章ダン戦,蓮拓,~2012
好きだから、愛しているから、
拓也さんはどこか、何かに怯えているように見えた。八神さん、と呟く声も震えているようで。しかし質問するのも野暮な気がして、開こうとした唇を閉じてそのまま、彼のそれに重ねる。彼をそこまで追いつめているのはなんなのだろうか。
~2012 文章ダン戦,英拓,~2012
不完全なひとの方が愛しい
「拓也さん」社長室は広い。広すぎてここに一人でいるのは少し寂しいことなんじゃないかと思う。彼は強い大人だから何も思わないのだろうけど。あ、でも普段は一人じゃなくて、あの霧野さんもいるのか。そう思うと何故か少しもやもやする。「……拓也さーん、…
~2012 文章カズ拓,ダン戦,~2012
世界はもうやさしくない
「拓也」
呼ばれると、兄を思い出してずきりと胸が痛んだ。拓也をただ拓也と呼ぶ人物は、もうこの世には檜山蓮の他にいない。
~2012 文章ダン戦,蓮拓,~2012
ただ短い言葉だけでいい
目覚めて初めに見たのは、知らない天井だった。頭がずきずき音を立てて痛む。昨日の記憶がない、これはまさか。思うけど、頭は上手く回ってくれない。
「……くそ」
~2012 文章ダン戦,蓮拓,~2012
そこに至る、までの
力を入れないのは、入れる勇気がないから。入れたって大したことにはならない、傷も残らないだろうけれど、彼の苦しむ姿を見たくなかった。これ以上苦しんで欲しくなかった。触れた喉が、唾と息を呑み込んで動く。矛盾していることなんて、わかっている。
~2012 文章ダン戦,悠+拓,~2012