文章

そして出会うふたり

「で、セルエルはどうすんだ?」 アイルストでの一件が終わり、ノイシュの行く先も決まり、グランが部屋へ少し休みに行った頃。思い出したようにビィが疑問を呈する。ノイシュはセルエルの命により騎空団での活動を続けることになったが、さてセルエルは島に残るのか、ということだ。

いつか出逢うふたり

この艇には、因縁がある者同士はなかなか出会わないという都市伝説めいたものがあった。みんなそれに気づきつつ、しかし本人たちに伝えることはしない、という性質のせいもあるだろう。みんな大人であるか、気づきすらしない幼い子たちしかいないからだ。

鋼刃にうつるもの

バルツの店には、流石はドラフの国というか、剣から楽器までかなりの業物が揃っている。話には聞いていたが目の当たりにしたのはまったく初めてで、決して武器マニアではない俺でも圧倒されてしまった。やはり店ごとに専門は違うようだが、どこに行っても目を見張るものばかりで、疲れてしまうくらいだ。

翻弄される

「ええ、いいじゃん。たまに会ったときくらい」 「そう、じゃなくてだな……か、顔を近づけるな……!」 鼻の頭同士がぶつかる。というほど勢いはないが、ゼヘクにとって大事なのはそこまでの至近距離に想い人がいるということだ。

罪悪感に似たなにか

「……ちょっと、待ってくれ」 少し、少しの謝罪をしてすぐ去るはずだった。案の定彼はそれを許してくれなかったみたいで、僕がいつも身につけているマントの裾を引き、そう強い力でなくても逃げられないような雰囲気をつくっていた。

終わりある光を想う

気がつくと窓枠に肘を置いて、空を見ていた。亡くなった人間が星になるなどという話は当然信じていなかったが、彼を探すとどうしても上を見てしまう。まさか地上にいるわけもないのだから。

月は満ち欠ける

いつか、幼かった日に。ずっと一緒にいたいと初めて願ったのは、まだ友情しか感じていなかったころだったか。正直なところ自分はあのときから随分と変わってしまって、三日月のほうは何も変わっていない、とオルガは思う。冷たい無機質な目も、温かく微笑む目も。

たとえ何をなくしても

少し長め /「……こりゃあ、もう駄目かもな」 リディさんが呟いたが、おれはまだ諦めていない。目の前に広がる赤と紫の金属片の間に、目を引く黄色をした脱出用ポッドがある。飛び出すようにコクピットから出て、その中へはしかしゆっくりと入る。

他でもないあなたに

※現パロ 『会いたい、と言ったら、あんたは会いに来てくれるのか?』 電話の向こうで、くすりと笑うのが聞こえた。一応彼のほうが年下ではあるはずなのに、なぜかいつもこうだ。主導権を握られている、と思う。それは彼が持つある種のカリスマのせいなのだろうか。