~2018

金木犀と百合

※学パロ /一週間の三割ほどを保健室で過ごすゼヘクにとって、養護教諭であるドランクはクラス担任と同じくらいよく見知った仲だった。 「学校じゃなくて、通信教育とかのほうが良いんじゃない」 笑いながらそう言い、教師は書かなければならないはずの書類を丸めて捨てた。

口下手なあなた

あの日、誰もが虚ろな瞳をしていた。誰もがどんな言葉を発して良いものか図りかね、何を信じれば正しいと自分で思えるのか、答えを宙空に捜していた。そんなものはないに決まっているのに。 「……パーシヴァル」

見えないものを見ようとして

行為の際、ドランクはあまり自分で脱ぎたがらない。そういえば、と思う。騎空団にいる他のエルーン族を見ていると、男女関係なく肌を露出した格好の者が多い。女子は特に見ている俺が恥ずかしくなるほど……いや、いまはどうでもいいだろう。

静かに眺めたかった

とある昼下がり、とある島のとある街。グランは酒場で冷たいオレンジジュースを頂きながら魔物討伐の依頼を受け、誰を連れて行こうなどと思案しつつ帰路についた。が、途中のベンチに見知った珍しい姿を見つけ、立ち止まる。

そして出会うふたり

「で、セルエルはどうすんだ?」 アイルストでの一件が終わり、ノイシュの行く先も決まり、グランが部屋へ少し休みに行った頃。思い出したようにビィが疑問を呈する。ノイシュはセルエルの命により騎空団での活動を続けることになったが、さてセルエルは島に残るのか、ということだ。

いつか出逢うふたり

この艇には、因縁がある者同士はなかなか出会わないという都市伝説めいたものがあった。みんなそれに気づきつつ、しかし本人たちに伝えることはしない、という性質のせいもあるだろう。みんな大人であるか、気づきすらしない幼い子たちしかいないからだ。

鋼刃にうつるもの

バルツの店には、流石はドラフの国というか、剣から楽器までかなりの業物が揃っている。話には聞いていたが目の当たりにしたのはまったく初めてで、決して武器マニアではない俺でも圧倒されてしまった。やはり店ごとに専門は違うようだが、どこに行っても目を見張るものばかりで、疲れてしまうくらいだ。

翻弄される

「ええ、いいじゃん。たまに会ったときくらい」 「そう、じゃなくてだな……か、顔を近づけるな……!」 鼻の頭同士がぶつかる。というほど勢いはないが、ゼヘクにとって大事なのはそこまでの至近距離に想い人がいるということだ。

罪悪感に似たなにか

「……ちょっと、待ってくれ」 少し、少しの謝罪をしてすぐ去るはずだった。案の定彼はそれを許してくれなかったみたいで、僕がいつも身につけているマントの裾を引き、そう強い力でなくても逃げられないような雰囲気をつくっていた。

終わりある光を想う

気がつくと窓枠に肘を置いて、空を見ていた。亡くなった人間が星になるなどという話は当然信じていなかったが、彼を探すとどうしても上を見てしまう。まさか地上にいるわけもないのだから。

月は満ち欠ける

いつか、幼かった日に。ずっと一緒にいたいと初めて願ったのは、まだ友情しか感じていなかったころだったか。正直なところ自分はあのときから随分と変わってしまって、三日月のほうは何も変わっていない、とオルガは思う。冷たい無機質な目も、温かく微笑む目も。