祈りは届かなくとも
「土御門って指細いよなー、俺のと全然違う」
そりゃそっか、器用だもんな、とよくわからない自己完結をする上条。対して彼の手は至って普通の男子高校生と同じ、ある程度完成されてがっしりしたものだった。
~2012 文章上土,禁書,~2012
触れ方をしらないのはお互いさま
「お前は……どうなんだよ」
土御門の肩を強めに掴んで離さないまま、これ以上ないほど真面目な顔で上条は尋ねる。その目にはいつもとは少し違う輝きが宿っていて、見つめていて目眩を起こすほど眩しくて、それでも土御門は、彼のために目を逸らさなかった。
~2012 文章上土,禁書,~2012
誰がための葛藤
「幸せなのか?」
「くだらねェことを聞くンじゃねェよ」
そう吐くと、土御門はくすりと笑った。ばかにされているようで腹が立つ。そうではないとわかっていても。
~2012 文章一土,禁書,~2012
詰まるところ、静寂
じりじり、肌の焦げる音が聞こえそうなくらい日射しが強い。8月の半ばと云えば当然なのだが、手に持った棒アイスが溶けるのは困る。でも部屋にいれば風がなくてそれはそれで暑いし、と云った具合。
~2012 文章上土,禁書,~2012
その姿に触れたいと思うのが
よく聞くが恋と云うものは複雑でしかし単純なものだ。どんな紆余曲折があったとして、一目惚れだって友情の延長線だってそのときの気持ちは結局「好き」の一言以外には表せない。と思う。
~2012 文章上土,禁書,~2012
いらいら
もう出会うことはないと思っていたが。別れも告げず、それがあの集団だったと思っていたのだが、偶然とは恐ろしいものだ。
~2012 文章一土,禁書,~2012
積極的じゃない彼へ
箸で掴んだ自作ミニハンバーグを土御門の口に運びつつ、上条は非常に複雑な表情をする。
やっべー財布忘れちゃったなーとか云いそうな顔で、しかし云わずあからさまにこちらを見ているものだから、性分的に放ってはおけなかったのだ。
~2012 文章上土,禁書,~2012
誤魔化せるとでも
「別に悪いことじゃないだろ、むしろカミやんは笑わなさすぎ」
そう云って、ぐいーっと真横に右頬を引きのばされた。いや、これ笑わせようとしてるってより遊んでるだけじゃないのか。妙に強い力のせいで全然口が動かせないので、言葉にならない。ただの唸り声だ。
~2012 文章上土,禁書,~2012
思考
「……寝てしまった、か」
こんな状況に体勢で寝られるとはなんと無駄に器用な男だろう。逆に不器用と云ってもいいか。もしくはそんなに眠かったのか。
~2012 文章上土,禁書,~2012
絡まる
ぼうっと何も考えず、無心にサングラスの奥を見つめてみる。意味ありげにも無計画そうにも見える笑みは何を考えてるのか本当にわからない。俺の周りはなんとなく直情的なやつが多くて(あとで云ったら人のことは云えないと諭された、少し心外だが確かに)珍しい人物かもしれない。
~2012 文章上土,禁書,~2012
暑さにやられたのです
「……そういえば屋外プールとか、あったんだな……ここ」
「そうだな、いつも校舎とか校庭にいるから、あんま気づかねえよなー」
「そりゃ、水泳の授業くらいあるんだよなぁ……」
~2012 文章AB!,音日,~2012
綺麗じゃない告白
「……え、いや、お前って音無が好きなんじゃなかったの?」
「見た目通りの鈍感なのか、貴様は」
「それ、答えになってないって……」
~2012 文章AB!,直日,~2012