~2012

忘れてくれないか

数日前のように、暖炉の前で二人で、グラスを傾けた。あの仕事の報酬代わり。ただ何もなく二人で呑むのは久々ではないだろうか。 「その女性は結局、君の何だったんだ」 「わからん」 「……そうか」

伝えたいたくさんのこと

※パラレルというかifというか 彼女は屋上のフェンスに座っている。落ちないのだろうかと思うけど、菓子ばかり食べている割には身軽なのだ。風も強いのに、揺らすのは長い髪だけで、器用にバランスをとっている。 「……あんた、いつもここにいるよね」

これで最後

ひたすら、ひたすら彼は泣いた。気が済むまであと何時間。父を失ったときの自分のようだ、と思いだしながら、そのときに涙を受けとめたものが一体なんだったのか思いだせない。人ではなかった気がする。

失われるだけ

※死ネタ 足下を見てしまった。人間が倒れている。生死はわからない。だがもし生きていたとしても、すぐに死が訪れるだろうことは確かだ。

多分、過去なんてなくたって

握ってみたらその左手は思ったよりしっかりしていて、驚いた。普段は、と云うか見た目はどう見てもだめなタイプのおじさんなのに。 たまにこの人はこう云うギャップ(って云ったらいいんだろうか)があって、それに出会うたび、ドキドキする。

もう二度と、

痛いかよ、痛いだろ、それでいい。限界まで傷つけて喰らい尽くせばこいつのすべてを支配できるだろうか。そんなことになればそれはいい話だ。憎悪が欲情に変わったのはいつのことだったのか。互いに息が荒いのはもう長い時間ずっとそれをしていることの表しだった。正直、もうだいぶ疲れた。けれどそれをやめないのはこいつが気に入ったのか、と考えるとどうにも焦燥にかられる。