~2012

ある結果へ至るまで

師よ、あなたは死を怖れぬのですか、と尋ねたときの答えを覚えていない。ただ、君はどうなのかね、と聞かれたことは覚えている。綺礼は一言わかりませんと答えて苦笑され、その会話は終わった。それは覚えている。彼はどう答えたのだっただろう。不意に思い出して、気になった。

愛情表現だから

「いや、好きだよ」 ……すごく嫌そうな顔をされた。何が気に障ったのだろう、俺のこと好きかって聞くから答えただけなのに。もしかして花村は俺が嫌いなんだろうか、それだけは絶対にないはずだけど。

重なる面影

傷をつけないようにそっと、力の加減に気をつけながら、指で緩く束ねた銀髪に櫛を通す。彼女の面影を感じずにはいられなかった。いつも正面からあの幼い表情を見ているときには気づかない、イリヤスフィールの母親の面影。

片思いはつらいよ

※ニル←クロになるつもりだった 廊下にうずくまる人影があった。数歩近づけばそれが誰であるかは容易にわかったが、その人物はいま非常に声をかけづらい雰囲気を纏っていた。自分はあまりそういったことは気にならないのだが、特に話しかける理由もないので通りすぎようとする。

一抹の不安

※女装 「……何してんのさ」 「どう思う、集」 「そんなこと云われても…そもそも、どうして僕に聞くんだよ」 「お前が男どもで一番若いからだ」

世界で一番あまい病

何が世界で一番好きかってもちろん、キースさんの笑顔が一番好きだ。いつもの爽やかな笑顔から、少し照れながら見せる笑みまで全部。もっと単純に云うならそれはキースさん自体が一番なんだけど。

かみさまは救ってくれないから

「さやか、あたしがあんたのこと、好きって云ったらどうする。あんたが上條恭介に抱いている想いと同じ種類のものを、あたしがあんたに抱いているとしたら、ねえ」 暗闇に向かって呟いた。どうせ届かないと知っていれば、もう二度と届かないと知っていれば、その行動に意味はないのだから。

そのときにはどうか安らかなキスを

気づいたら視界は薄い青に染まっていた。息ができない。止める。服が貼りついて肌に伝えてくる、冷酷。長時間水の中に沈んでいれば当然、人間は呼吸をなくして死んでしまう。そんな冷たさ。 目を閉じてふと、これは夢なんだと思った。水に沈んでいるはずなのに、息を止めているはずなのに、苦しくない。全然。もしかしたら感覚がなくなっていたりするのかもしれないけれど、とりあえずヘンな感覚だ。

他力本願な幸福

涙腺さえあれば泣くことくらい簡単だ。悲しくなくても痛くなくても涙を流すことはできる。何度も涙を流してきたけど、全部悲しいとか痛いとかそんな感情から来るものじゃなかった。涙は女の武器と云うから。

神にでも祈ろうか

那月は身長に目を瞑れば女の子みたいに可愛いと思う。奴はやたらと俺に対して可愛い可愛いと男にとっては不名誉極まりない形容詞を連発するけれど、名前も口調もふわふわの髪の毛もきらきら光る綺麗な目も、絶対に那月の方が可愛い。と、俺はずっと思っていた…

気持ちなんて知らなくていい

いつかどこかの昼下がり。とか適当な言葉で表せられるほどどうでも良い時間。 「ラグナ君はばかですねえ」 「黙れその声帯掻っ切ってやろうか」 「いいですけど、声が出なくなって筆談にしたら、ラグナ君読めないでしょう。漢字」 「漢字くらい読めるわ。お前は俺を何だと思ってんだ」