知りたくなかった、と思いきり泣きたかった
「…あ、」
ほとんど息だけの驚嘆が漏れる。喉の奥で笑った。結局自分は自分だけが幸せならそれで良いんだと、今更ながらに気づいてしまった。そして、それでなければ人間長く生きてはいけないことも。
~2012 文章TOX,~2012,アルフレド
結局は離れられない
耳朶を叩く甘ったるい言葉。似合わない。どこからどう見てよく考えてみても似つかわしくない。別にマゾヒストの気はないけれど、もっと冷たくしてくれて良いんだ。その方が、ずっと生きてる心地がする。
~2012 文章TOX,~2012,ジュアル
名残惜しいと思うこと
背後から抱きつくと鼻腔を擽る香水の香り。これは向こうのものだろうか、なんて思いながら、彼の肩ごしに表情を窺う。目に見えて不服そうに口を尖らせていた。
~2012 文章TOX,~2012,バラアル
仔猫と彼
※仔猫とぼく のあと 「全然似てねえだろ、こいつ」
ばっさり切り捨てられた。当然と云えば当然だ。流石に大の大人に自分と小動物とが似ていると云われて、ああなるほどと簡単に納得する純粋な人間はいない。でも似ていると思うのだから仕方ないでしょう。無言に、両手で持ち上げた仔猫を彼の前に突きだす。
~2012 文章TOX,~2012,ジュアル
仔猫とぼく
薄汚れた茶色い毛をさわさわと撫でる。日が昇り始めた朝方のイル・ファン海停、早く起きすぎたので、人々が店を開ける準備をしているのは横目に海を見ていたらふと視界に入ったのだ。
汚れているから野良だとは思うけど、親はどこにいるのだろう。まだ幼いのに、はぐれてしまったのだろうか。
~2012 文章TOX,~2012,ジュアル
包みこませて
繋ぎとめていたいと思い始めたのはいつ頃からだったんだろう。一番初めに彼が別れを告げたときか。それから、何をどうしてこんなに屈折した感情に変わったのだろうか。屈折したというか、ただ複雑なだけだと思うけど、とりあえず面倒な何か。
~2012 文章TOX,~2012,ジュアル
ポッキーの日
※現パロ同棲設定 ビニール袋のものらしき音をがさがさ鳴らしながら彼は帰宅した。おかえり、と云ったら弾んだ声がただいま、と返ってくる。
~2012 文章TOX,~2012,ジュアル
合鍵
※学パロ 呼びだされて手渡されたのは、彼の手より幾分小さな鍵だった。思わず驚いた顔で見上げてしまう。アルヴィンは苦笑して云った。
~2012 文章TOX,~2012,ジュアル
ずっとこうしていられるならそれはそれで
「危なっかしいのは変わらないな、今でも」
「う……」
「皆は頼りになるー、とか云うけど、俺から見りゃまだまだ」
~2012 文章TOX,~2012,ジュアル
満たされないグレー
暴力は好きではないから、と云いながら彼は容赦なく俺の首を握り潰さんかぎりに絞める。俺だって人間だから、痛いもんは痛い。呼吸できないもんはできない。
~2012 文章TOX,ジュアル,~2012
それでもきみは僕の前を歩いていくから
※発売前
「俺はさ、居場所を作るわけにはいかないんだ。お前もちゃんとした夢があるんならわかるだろ、そういう仕事なんだよ。ずっとふらふら彷徨って誰かに雇われて金をもらって、いつかはどこかで一人で死ぬ。それが俺の夢さ」
「そんな、……そんなの」
「それにお前が口を出す権利はない。それもわかるだろ、青少年」
~2012 文章TOX,ジュアル,~2012
目を閉じていたらいい
※発売前
「お、なんだ。今度は鳥かよ?」
「うん、木の下に墜ちちゃってて」
「まだ雛なのか」
「だろうね。今から手当てするところ」
~2012 文章TOX,ジュアル,~2012