AB!

暑さにやられたのです

「……そういえば屋外プールとか、あったんだな……ここ」 「そうだな、いつも校舎とか校庭にいるから、あんま気づかねえよなー」 「そりゃ、水泳の授業くらいあるんだよなぁ……」

綺麗じゃない告白

「……え、いや、お前って音無が好きなんじゃなかったの?」 「見た目通りの鈍感なのか、貴様は」 「それ、答えになってないって……」

団結力の無駄遣い

「どうして黙ってたのよ」 「え、あ、いや、……」 そんなん誰だって隠したくなるだろう、むしろ怒られる理由がわからないんだが。音無と日向は互いにそう思いながら、腕組み仁王立ちするゆりの前に正座していた。

およそ一生の恋というものはない

月の綺麗な夜、なんてかっこつけた形容。でも実際そうだったからそれくらいしか思いつかなかった。…そんな夜、日向はグラウンドで木製バットを持ち素振っていた。その顔は真剣そのもので、声をかけるのを躊躇うほど。

恋愛パラドックス

昨日のあのあとからずうっとそうだ。あいつの表情が、声が、感触が体から離れてくれなくて、焼きついたまま。逃げこんだ屋上で1人、あーとかうーとか唸り声をあげていた。

それくらい好きってことさ

そうそれはいつだったか、野田に「なんでお前、そんな物騒なもん持ってるんだよ」とふと何の気なしに聞いた。「貴様に教えるほど安くはない」、そう険しい顔で吐きすてて物騒なそれを喉もとに突きつけられた。

続く終わり

「お前が……お前が、消したんだろ、あいつを!」 日向と名乗った男はただひたすら、激昂していた。あいつとは音無結弦のことだ。結弦はついさっき、――とは云っても2、3時間ほど前だが、この世界から完全に存在を跡形もなく消した。

とけていく

融けていく。溶けていく。解けていく、自分と云う存在が。消えるときってこんなんだったのか、なんて呑気に考える意識もだんだん薄れていく。記憶のなかの五十嵐も、目の前の奏も。ついでに思いだした、日向のこえと顔も。

つめたい

殺しても死なないと云う事実はあまりにも残酷だった。どんなに苦しくても、辛くても、痛くても、死ねないのだ。意識を手放そうとしても、手放したとしても、痛みにまた目を覚ます。

再会=開始

※転生後ネタ 「いやー、まさかこんなところで音無に会えるとはなっ」 小学生のころ転校してしまった友人に高校で再会したときのような軽い口調で云うと、日向はコップのプラスチック部分をべこりと指でへこませながらアイスコーヒーを啜った。

伝わる上昇体温

※学パロ 「おい日向。日向、起きろ」 「……あ…?」 頭をべしっと叩かれて眠りから覚めた。いってえ。痛みが時間差で襲ってくる。

「ばーか」

そんなんだから、…音無が、そんなんだから」 簡潔に云えば俺は泣いていた。音無に対するちょっとした嫉妬とか大袈裟だけど憎悪とか、恥ずかしいけど愛だとか、いろいろなものを混ぜこんだ涙。