~2012

どうしていつからこんなに

死んだ世界にも、律儀に1日は巡ってくる。朝の光に目を醒ましたらすぐ横に音無の顔があって、一瞬驚いた。そいつはさも気持ちよさそうに眠っていて、俺が身体を起こしても起きそうにはない。

すれちがいトライアングル

僕は音無さんが好きだ、それが友愛ではなく恋慕だと云うことは理解しているし否定する気も毛頭ない。 いつ惚れたかと云えば、まあ、話せば長くなるのだが――それよりも問題は、あの日向とか云う見た目からもうアホっぽいアホの存在だ。

このまま、ずっとこのまま

日向の死因は、薬をやったこと、らしい。 「で、どんな気分だったんだ? そんとき」 「最高だったよ、そりゃな。あのときの俺にはそれしかなかった。禁断症状とか出ると最悪だけどさ」 「……はあ。やっぱり、そういうもんなのか」

倒錯ロマンス

「……俺のこと、嫌いか?」 音無はそんなギャルゲーとかで女の子が云っていそうな科白を吐いて、これまたギャルゲーとかで女の子がしてきそうな上目遣いをして俺をけしかけてくる、及び、見つめてくる。

とある二人

「門田さん、プラモとか組まないっすか」 「お前、そういう分野も好きだっけ」 「いやいやそれは偏見っすよ門田さん。萌えも燃えも両立してこそ真の」 「もういい」

本能と云う名の必然

もう記憶は戻ったりしないと、理由はなくもわかる。そもそも失くしてしまったものを何の努力もせず取り戻そうなんておかしい話だ。何かのきっかけで戻ることもあるそうだが、失くしてから数ヶ月、戻らなくともいいか、と思うようになってきた。――記憶喪失ネタ⑥(完結)

揺れ動く否と肯

それで、一体どうして俺はこいつと一緒に夕飯を食っているのか。こいつは俺に飯を作らせにわざわざ来たのか。なんだかんだで2人分作ってしまった俺も俺だが、せめて手伝いくらいはしろ。――記憶喪失ネタ⑤

不似合いセンチメンタリティ

……あ? と、声が漏れた。後ろから誰かに呼ばれた気がしたのだ。立ちどまり振りかえると、誰もいない。ポケットから出しかけた拳を持てあます。あんな呼び名で呼ぶ男は、この世に1人しか存在しないはずだった。――記憶喪失ネタ④

「たまには」の効果

「…っ」 やっちまった、という顔をしていた。ぶっちゃけある意味加害者である紀田正臣ですら、数秒ほど思考停止したくらいである。それは両方にかなりの衝撃を与えたようだった。

いっそ喋らなければいいのに

別に俺だってこんな風になりたくてなったわけじゃない。すべてこの力のせいだなんてことは云えないけど、それは云いたい。近寄る奴をなくすためだ、と臨也に云ったらばかにされた。

それはいくつもの矛盾が重なった、ひとつの矛盾。

ああそうさ俺は臆病者だ。杏里からも臨也さんからも門田さんたちからもサイモンからさえも帝人から、逃げだした卑怯なやつだ。開き直ってるんじゃない、認めてずっと償いもせず背負ってる。屁理屈でもそう云うならそれでいい、言及されることからも俺は逃げていたいからだ。