英拓

言ってはならない

どうしてだろう、いつからか自分の彼への想いに自信が持てなくなった。好きです、とどんなに繰り返しても、何かどこかが食い違っているように思えて仕方がないのだ。好きなのは確かなのに。

後悔ならば置いてきた

久々に会った八神さんは、随分と髪が短くなっていた。正直に云えば一目見たときは誰かと思った。あの赤が波打つような髪が風に流れるのを見るのは、嫌いではなかったのだが。少し残念に思う。

好きだから、愛しているから、

拓也さんはどこか、何かに怯えているように見えた。八神さん、と呟く声も震えているようで。しかし質問するのも野暮な気がして、開こうとした唇を閉じてそのまま、彼のそれに重ねる。彼をそこまで追いつめているのはなんなのだろうか。