ナイリディ

きみの静かな鼓動はこんなにも愛しい

その男はただ、俺の胸に抱かれて泣いていた。ごめんなさい、と譫言のように呟きながら。掠れてしまっているそれは、そのまま心臓に刺さって痛い。彼や、その周りで起きたことをすべて理解しているわけではない俺でもそう感じてしまうほど、悲痛な声だった。

いまは見えないもの

手を引かれたような気がした。実際には誰もそんなことはしていなかったのだが、確かに感触があったのである。軽く心霊現象だと思った。けれど、決して冷たい感触ではなくて、それのためにどうしても戸惑ってしまう。いったいなんだったのだろう。