ダン戦

変わらぬさだめ

彼は俺の腕を掴んだかと思えば、驚いて思わず開いた手の平を彼自身の喉に押しつけた。 「拓也」 「…どうしたんだ、檜山」 「殺してくれ。もう」

言ってはならない

どうしてだろう、いつからか自分の彼への想いに自信が持てなくなった。好きです、とどんなに繰り返しても、何かどこかが食い違っているように思えて仕方がないのだ。好きなのは確かなのに。

理由を聞けたら

檜山のその笑顔は、ときどき拓也に違和感を感じさせた。ときどき、本当に空虚なのだ。瞳の中はただ何もない伽藍洞になっていて、そう、云ってしまうなら人間のものではないような。

淋しがりと煙草

ライターで火を点けてから、煙草の煙は嫌いだと云っていたあいつの顔が浮かんだ。いまとなっては無意識のうちでやっていることだが、独りでいるときだけ吸うようになったのは、そういえばそのせいだ。

後悔ならば置いてきた

久々に会った八神さんは、随分と髪が短くなっていた。正直に云えば一目見たときは誰かと思った。あの赤が波打つような髪が風に流れるのを見るのは、嫌いではなかったのだが。少し残念に思う。

その目で見ていて

初めて会ったときは、柄にもなくものすごく緊張した。拓也さんはレックスの相棒であり、レックスから勧誘された組織のリーダーだった。緊張しないはずがない。

もう一度眠る前に

帰ってくるなり、俺の姿を視界に認めるとユジンは、脱力して倒れこんできた。いきなりだったので慌てはしたが、どうにか彼を支える。一体どうしたのだろう。順当に考えれば仕事の疲れだろうけれど。

いっそすべて忘れてしまえば

「俺たちのしていることは、本当に意味があるんだろうか」「どういうことだ?」「目標に近づくたびに思う。俺たちが海道義光を打ち倒しイノベーターを崩壊させ、そうして世界はどうなるのか」「ばかな、奴らはエターナルサイクラーを悪用しようとしているんだ…