カズ拓

不完全なひとの方が愛しい

「拓也さん」社長室は広い。広すぎてここに一人でいるのは少し寂しいことなんじゃないかと思う。彼は強い大人だから何も思わないのだろうけど。あ、でも普段は一人じゃなくて、あの霧野さんもいるのか。そう思うと何故か少しもやもやする。「……拓也さーん、…

あたたかい

「、……って、拓也さん!?」「ああ、起きたのか、カズ。打ったところは大丈夫か? 痛くはないか」「え、あ、あ……うん、ちょっと痛い、かも……」気がつくと大きな背中に揺られていて、実を云うと、本気で死ぬほど驚いた。起きたのを隠してもう一度寝るか…

理由などありえません

「……なぁ、ちょっと」 「ん? どうかしたか」 「すげぇ恥ずかしいんだけど」 繋がれた右手。身長と年齢差を考えて、どこから見ても親族にしか見えないんじゃないかなぁ、と思う。