胸の奥がざわざわする。いつか誰かがそんなことを言っていた気がするが、長らくオレにはその感覚が解らなかった。これは不安というやつなのだろうか。一度自分が自分じゃなくなって、アイツに助けられて、ほとんど成り行きで世界を作り直してから、オレは少しずつ変わっていっている。それは変わらない日常とは対極で、むしろここに至るまでには周囲のほうが目まぐるしく変わっていたから、周りの環境に左右されるのかもしれない。昔のオレなら、こんなこと考えもしなかったはずだ。
からっぽ島は地形の差が激しく、特に緑の開拓地は高い山と窪んだ土地でできていて、ビルドのヤツはどうしたものかと首を捻っていた。らしくないなと声を掛けたが、どうもやれることが多くてむしろ悩むらしい。そんなものなのだろうか。作る側の気持ちはまだとんとわからないのだった。
とりあえず下から作ると言っていたアイツは、見下ろせばせっせと何かしらの建物を作っていた。やけに広いから食堂でも作るのだろうか。このほとんど更地になっている山らしきものの上部分は、基本的に誰も来ないし、開拓地を見渡しやすい。ここから見ていると、ドルトンのあのうっとうしいヒゲもちっぽけなものだ。本来の神というのはこういう気分なのかもしれない。
いつからか、アイツの傍にいるとときどき胸が締めつけられるような気分になって。いま胸の奥がざわざわするのはそのせいかもわからない。胸に手を当ててももちろん傷なんかはないし、いままでそんなことはなかったからきっとあの変化のためだ。串刺しにされて焚火の横に置かれた魚のような気分になる。身体をじりじりと灼かれていくような。それから逃げたくてこんなところにいるが、いずれアイツもひと通り作り終えたらこちらに来るだろう。それまでに答えを出したかった。
きっとアイツは訊けば教えてくれる。もしかしたらまだ早いと笑われるかもしれないが。それが嫌なわけではないが、どうしてかこの脚が動いてくれなかった。